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【税理士が解説】不動産の生前贈与をするときに掛かる税金
不動産を生前贈与する際には、さまざまな税金がかかります。
適切な対策を行わないと、思わぬ税負担が発生することもあるため注意が必要です。
本記事では、不動産の生前贈与に関わる税金の種類や節税対策について解説します。
不動産の生前贈与とは?
不動産の生前贈与は、自己の相続発生前に、不動産を贈与することです。
不動産の生前贈与にあたっては贈与税が発生する以外にも税負担がありますので注意が必要です。
不動産の生前贈与に掛かる税金
不動産の生前贈与に掛かる税金をご案内します。
贈与税
生前贈与をすると、受贈者(贈与を受けた人)には、原則として、贈与税が発生します。
贈与税は、通常は暦年課税の贈与の税率が適用されるものでありますが、申告に併せて選択届出書を税務署に提出することで、相続時精算課税の贈与の税率を一律20%適用にすることもできます。
相続時精算課税は、制約もありますが、近年とても利用しやすくなっております。
また、暦年課税の贈与は、一般税率と特例税率に分かれます。
【暦年課税による特別税率の例】
これは基礎控除後の課税価格控除額をあらわしています。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ― |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
※上記税率は、直系尊属(祖父母や父母等)からその年の1月1日において18歳以上の者(子、孫への贈与)への贈与の税率(特例税率)です。
※基礎控除として年間110万円が適用され、それを超えた部分に対して税率が適用されます。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産の取得に対して課される都道府県税です。
土地・家屋ともに固定資産税評価額×4%
登録免許税
不動産の名義変更には登録免許税が必要です。
(贈与の場合)
土地・家屋ともに固定資産税評価額 × 2%
名義変更に掛かる登録免許税は、相続時に掛かる登録免許税と比べると、税率が高くなることから、予想外の出費になることもありますので、多少注意を要します。
(相続の場合)
土地・家屋ともに固定資産税評価額 × 0.4%
生前贈与の節税対策
生前贈与の際に利用できる節税対策を紹介します。
暦年贈与の活用
基礎控除110万円以内の贈与は申告不要であり、贈与税もかかりません。
また、生前贈与により取得した財産が相続財産に加算される期間は、相続開始前3年以内から7年以内に延長されました。
延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円までは加算対象外となります。
相続時精算課税制度の利用
相続時精算課税の制度を利用することで、60歳以上の親又は祖父母から18歳以上の子又は孫へ贈与であれば、基礎控除110万円に加えて最大2,500円の特別控除を使った贈与が可能になりました。
このため、贈与税の支払いゼロで、最大2,610万円(基礎控除110万円と特別控除2,500万円)の贈与が可能です。
ただし、相続時精算課税においては、相続時には基礎控除110万円を除き過去の精算課税による贈与額は全て相続税に加算されることになるので注意を要します。
さらに、相続時精算課税を選択するためには最初の選択の際に申告書とともに選択届出書の提出が必要であり、一度選択すると、暦年課税に戻ることができないことにも注意しましょう。
配偶者控除の活用
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅を贈与する場合、2,000万円まで非課税となります。
これは一生に一度しか利用できませんが、大きな節税効果があります。
まとめ
不動産の生前贈与には、贈与税、不動産取得税、登録免許税などが発生します。
適切な節税対策をおこなうことで、税負担を軽減することが可能です。
不動産の生前贈与を検討する際は、税理士などの専門家に相談し、最適な方法を選びましょう。